タイトルに魅せられて

 

首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑶子は、虚実の狭間を縫うモンタージュを駆使し、刺激的な画面を創りだす。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった!?事故か、他殺か、1本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワイダニット」。

 こんな内容紹介が私の気を惹いた。
 もうちょっと詳しく言うと、取調べを受けた容疑者が最後に浮かべた笑みを、悪意たっぷりに編
集し、いかにも犯人に見えるような報道を行ったことを発端として起こる事件を扱うミステリー作
品だそうです。

 そのタイトルが「破線のマリス」。

 マリス、というのは古典フランス語で悪意の意味。
 破線の悪意。

 連続的な映像の、一部をピックアップ、一部をカットすることにより生み出される破線が生み出
す悪意。図式で表すとすれば、下記のような感じでしょうか。

元映像:――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
編集中:―  ― ― ―  ― ― ― ―  ―  ―  ―  ―  ―  ―  ―  ― ― ― ― ― 
報道時:―――――――――――――――――――

 見せたい部分だけ残し、見せたくない部分はカットし、報道時にはいかにもそれが連続的な映像
であるかのように見せかける。これを悪意を持って行えば、映し出される者を貶めることも可能に
なる。
 そんな物語に付けたタイトルが「破線のマリス」。キャッチコピーかと思うほどハマるタイトル
だと思います。
 私自身、結構タイトルだけで本を買うタイプなので、この手の「巧い」タイトルには弱いのです。
例えば、森博嗣さんなどは、タイトルがとにかく巧い。「封印再度〜Who Inside〜」なんてタイト
ルで、数十年ぶりに開けられ、再び封印された箱の中には何が入っているのか、なんて謎を追う物
語を描き切ってしまう。
 内容にカッチリはまるタイトルをつけられる作家さんというのは、外れがないというのが私の主
義でして、私はタイトルと裏表紙の内容紹介、書き出しの数ページで本を選んで外したことはほと
んどありません。

 ちなみに、「破線のマリス」はまだ読んでもいませんが!!