狐罠 (講談社文庫)

狐罠 (講談社文庫)

 買って二日で文庫本400ページを読みきりました。淡々としていながら、テンポが
良い小説だと感じました。
 感想としては、
①贋作を取り扱った小説で、その描写が非常に精緻なこと。
②骨董業界という、非日常的なものを分かりやすく描けていること。
③主人公の女性骨董商が、凛とした印象を与えており、それが物語自身の爽快感
  を高めていること。

 上記、①だけでは非常に重々しく、ダークな印象を与えます。
 しかし、この小説は、主人公がまずある同業者から贋作を買わされ、買った相手に
他の贋作を買わせることによって、借りを返そうとするという構造。そして③の主人
公が非常にさっぱりとした性格の、凛とした印象を与える女性であるということが、
物語に爽快感を与えていると感じました。

 確かに上記の流れが大きなところを占めるものではありますが、その他にも当然傍
流がたくさん流れており、最終的にはそれが一つの流れに織りあわされます。ここで
はあえて述べませんが、骨董品の世界の非日常性と、骨董品や贋作に関する精緻
な描写を味わうだけでも、文庫本一冊の元は取れるのではないかなぁと思いました。